「将来家のリフォームを…」と考え始めたとき、
「どこに一番お金がかかるの?」「屋根や外壁の修繕って必要なの?」と考えたことありますか?
特に外回りの工事は派手さがなく、費用感も分かりづらいため、後回しにしがちですよね。

住宅ローンを払う期間中に、修繕で大きなお金が掛かると大問題です。
将来を見越した計画が大切です。
筆者もこれまで、数多くの現場で「もっと早く知っていればよかった…」という後悔の声を耳にしてきました。
見た目以上にコストと劣化の影響が大きいのが、屋根と外壁なんです。
新築時やリフォーム後に後悔しないためには、“正しい知識”を持って判断することが何より大切です。
この記事では、戸建てリフォームにおいて特に費用がかかる「屋根」と「外壁」について、
リアルな費用相場、素材の選び方、劣化の見極めポイント、注意点までわかりやすく解説します。
■この記事でわかること
・戸建てリフォームで最も費用がかかる「屋根工事」の実態
・外壁メンテナンスを怠ると起きるリスクとその対処法
・将来のメンテナンスコストを抑える素材選びのコツ
屋根・外壁工事の費用と重要性
リフォームで最も費用がかかる工事は ズバリ、屋根工事です。
塗装や漆喰補修などの簡易メンテナンスなら数十万円で済みますが、 葺き替えとなると、屋根形状・劣化具合・立地によって大きく変動し、 延床30坪程度で200〜300万円を超えることも珍しくありません。
屋根は常に自然環境にさらされており、耐久性の低い建材では10年ほどで劣化が始まります。 屋根と外壁を別々に工事すると、そのたびに足場(100万円前後)が必要になるため、 一緒にメンテナンスできるよう耐用年数を揃えて素材を選ぶことがポイントです。
外壁材にもサイディング、ALC、左官壁など様々あり、 塗装だけなら100万円前後、張り替えや補修となると200万円以上になるケースもあります。
マンションでは共用部分(外部周り)は管理費・修繕積立金で修繕計画が成されていますが、 戸建てでは自分で費用計画を立てる必要があります。 これが意外と見落とされやすいポイントです。

一般的に管理積立費で2万円前後はかかってきます。
一戸建ては修繕費用を自分たちで貯める必要があります。
建物形状で費用に大きく差が出る?
建物の外観デザインは魅力のひとつですが、形状によって施工費が大きく変わることがあります。
例えば、軒の出が大きい、立体感のあるデザイン、下屋根と2階壁の取り合いが多いなどは、 施工に手間がかかり、費用もアップします。 反対に、凹凸の少ない総二階のシンプルな形状なら足場設置や施工がしやすく、 メンテナンス費用も抑えられます。
おしゃれな寄棟屋根は見た目が美しい反面、雨樋の数が増え、 材料費や施工費が上がるなどのデメリットも。 室外機や換気口、給湯器など付帯設備の位置も費用に影響します。
建築では「強・用・美」のバランスが大切。 美しさだけでなく、合理性・メンテナンス性も考慮しましょう。
新築を建てる時に、15年後・30年後の将来を考える人は多くありません。けれども、確実に年月は過ぎていきます。そして、“永遠に保つ建材”は存在しません。だからこそ、今の暮らしやデザイン性だけでなく、将来のメンテナンスまで視野に入れた家づくりが、後悔のない選択につながります。
選ぶ材料で費用や耐久性は色々
屋根材はざっくり分けると、以下の4種類があります
- 日本瓦
- スレート系
- 金属系(例:ガルバリウム鋼板)
- アスファルトシングル
※平らな屋根(陸屋根)の場合は、「シート防水」「FRP」などの防水工法が主流です。
外壁材には、以下のようなものがあります:
- 金属サイディング
- 窯業系サイディング
- 塗装や吹き付け仕上げ(下地はALCや左官など)
- タイル貼り
どちらも、見た目の美しさと将来のメンテナンスコストを意識して選びたい部分です。
屋根や外壁は、長期的に見て「何回足場を組む必要があるか?」を意識して材料を選ぶと、生涯コストを抑えることができます。たとえば、屋根の耐久年数が30年でも外壁が15年なら、15年後に屋根と外壁のどちらかに手を入れる=再度足場代がかかることになります。
日本瓦の魅力と注意点
日本瓦は、他の屋根材と比べて**圧倒的な耐久性(50年以上)を誇ります。一度葺けば、自分の代で葺き替えることはほぼありません。
短所:重い・高価・漆喰メンテが必要
- 非常に重く、建物の構造に負担がかかる
- 材料費・施工費も高額(スレート系の1.5〜2倍)
- 漆喰(接着部)部分は15年前後に補修が必要
日本瓦は、独特の立体感・流線型の美しさがあり、日本家屋にとって欠かせない存在感ある素材です。日本瓦の家では、外壁に左官仕上げが用いられることが多く、15〜20年程度で、外壁塗装+漆喰補修+軒裏や破風のメンテナンスを行うと、非常にバランスが良くなります。
日本瓦のお家で築30〜50年の場合は要注意!
西暦2000年以降に建てられた住宅は耐震基準が厳しくなっていますが、それ以前の建物は耐震性に不安が残る場合があります。重たい日本瓦を使っている場合、軽量瓦や金属屋根に葺き替えることで、揺れに対する安全性が大きく向上します。
特に「土葺き(つちぶき)」のお家は、まず耐震チェックからおすすめします。
金属屋根(ガルバリウム鋼板など)
金属系の屋根材は、軽量で施工がしやすく、コストも抑えられるのが特徴。耐久性もおおよそ30年前後と、バランスの良い素材です。
短所:ハリボテ感や断熱性に注意
- 建物形状によってはハリボテ感が出ることもあるため、外観とのバランスに注意
- 断熱性に劣るため、断熱材や遮熱対策が必須
→日本瓦から葺き替えた際、夏に2階が暑すぎる!というトラブルも発生しがちです
(実際に新人時代、施主様に大目玉をくらった経験があります…)
スレート系(化粧スレート・コンクリート瓦など)
スレート系はコーティングの種類によって耐久性が、15年前後〜30年前後と大きく変わるのが特徴です。価格差はそこまで大きくないため、できるだけ耐久性の高い製品を選ぶのがおすすめ。
建売でよく見かける「苔だらけの屋根」の正体…
10年も経たずに苔が生えてしまうのは、安価で販売しやすい建材を使っているため。でも…顧客は30年以上のローンを組んでいるのです。悲しい現実です。こちらの建材も日本瓦からの葺き替え時には、断熱施工のセット導入がおすすめです。
コンクリート瓦の選択もあり
瓦の立体感を再現したコンクリート瓦という選択肢もあります。形状によっては非常に高級感があります。価格はスレートより1.2〜1.5倍程度。ただし、重さやコーティングの質に差があるため、信頼できる業者とよく相談することが重要です。
これは外壁材にも言えることですが、高級感のある建物にしたい場合は、立体感のある材料を選ぶ事をおすすめします。もちろんその分金額は高くなありますが、共に過ごす住まいになるので、少しでも気持ちの上がる仕様にしたいところです。
外壁材の選定ポイント
- 外壁材にも立体感のあるデザインを選ぶと、高級感がアップ
- 安価なサイディング材は、15年前後で劣化することも
- コーキングの劣化でひび割れから内部が見えてしまう家も少なくありません
→ ジョイントレスの製品やガルバリウム外壁など、良い商品もあります。必ず資料を確認!
屋根材が30年持つのに外壁が15年しか保たないと、屋根のタイミングで外壁も足場を組んで再塗装…なんて二度手間が発生。逆に、屋根が10年しか保たないのに高価な外壁を選んでも、外壁塗装の意味が半減してしまいます。
見落とされがちな「軒天・破風材」も要チェック
軒裏や破風(はふ)部分の塗装が剥がれて、見た目が損なわれているお家を見たことありませんか?ここも屋根・外壁と同様に、メンテナンスサイクルを揃えて材料を選ぶのが大切です。
劣化について
そもそも劣化て何?
住まいのメンテナンスを考える上で、よく出てくるのが「劣化」という言葉。では、その「劣化」とは具体的にどういう状態を指すのでしょうか?
わかりやすい劣化のサインは「見た目の変化」
最も気づきやすいのが、意匠面の劣化です。たとえばこんな変化は、見たことがあるかもしれません
- 色あせ
- 苔の発生
- 塗膜の剥がれ
家に関心のある方は、「最近、家の見栄えが悪くなってきたな…」と感じ、この段階で塗装やメンテナンスを検討されるケースもあります。
一方で、関心がない場合は、そのまま放置してしまうことが多いのです。
放置するとどうなるの?
劣化が進むと、建材が水や汚れを弾けなくなり、どんどん染み込んでいきます。するとどうなるかというと…
- 吸水による風化
- 冬場には染み込んだ水が凍って膨張・破損(特に屋根材)
- 北面など日当たりが悪い面では、乾きにくく、外壁も劣化しやすい
さらに、左官仕上げの外壁では、下地を支えるラス(金網状の材料)が錆びてきます。この状態を長期間放置すると、強風や豪雨などの自然災害時に、一気に破損する危険性も。
すぐ雨漏りするの?
すぐには雨漏りしないケースも多いです。多くの住宅では防水紙(防水シートやルーフィング)がしっかり施工されているからです。ただし!
- 施工ミス
- 防水紙の劣化
- 台風や飛来物による損傷
こういった要因があると、内部に水が回ってしまう危険性が出てきます。
その水が構造部(柱や梁)まで到達すると、建物の寿命に関わる大問題に。場合によっては、構造補強や大規模修繕が必要になり、予想外の出費に繋がることも。
日頃のメンテナンスが何より大切!
例えば外壁なら、年に1回、水をかけて洗ってあげるだけでも効果的です。
※注意:サッシ周りは下からの水に弱いため、上からやさしく流すようにしましょう。屋根は高所で危険なので、基本的にはプロに任せるのが安全です。コーティングが施している建材は高圧洗浄はNGです。
塗装は何でもすればいいわけではない
塗装にもさまざまな種類・グレードがあります。
前述したように、屋根と外壁のメンテナンスサイクルを合わせて選ぶことが重要です。
高価な塗装材を選んで、屋根とのメンテナンスサイクルがバラバラだと、また足場を組み直す必要が出て、余計な費用がかかってしまいます。
塗装業者や屋根業者単体で依頼すると、自社で対応できない分野を無理に自分たちで施工することも。これは、他の職人を呼ぶとコストがかかるからです。できれば、総合建築業者や信頼できる工務店に依頼し、専門職ごとの連携が取れているかどうかを確認するのがおすすめです。
※ただし、工務店でも現場監督が自分で施工してしまい、失敗している事例もあります。
最近の外壁材は高性能。塗装が必要とは限らない
最近のサイディング材には、初めから高耐久の塗膜が施された製品も増えています。こういった材料に無理に塗装をすると、塗装がが剥がれてしまうことも。この場合は、コーキング補修のみで十分なケースも多いです。
ハウスメーカーの家は独自仕様に注意
ハウスメーカーの住宅は、独自仕様の建材や工法を採用していることが多く、他社がメンテナンスしにくい=費用が高くなる傾向があります。だからこそ、新築時点で将来のメンテナンスを見越した仕様決定・設計が重要です。
経験上劣化しやすいのは「北側」が多いです。基本はプロに建物の状況を判断してもらうことがベストです。ただ訪問販売には要注意!私も長年建築業界にいますが、残念ながら“お行儀のいい業界”とは言えません。だからこそ、しっかりとした業者・信頼できる担当者に依頼することが何よりも大切です。
まとめ|仕様を決めるときに忘れてはいけないこと
屋根や外壁は、建物を守る盾のような存在です。 しかし傷んでしまうと、最も高額な出費が必要になる部分でもあります。
新築時・リフォーム時には、
- 将来のメンテナンスコスト
- 足場の回数
- 素材の耐久年数 を意識した仕様決定を心がけましょう。
訪問販売や安価な施工にはリスクも多く、 信頼できる業者選び・複数社からの見積もり取得も重要です。
長く快適に暮らすために、将来まで見据えた賢い選択を。 本記事が、皆さんの住まいづくりに少しでも役立てば幸いです。
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