戸建てリフォームで最も費用がかかる外回り工事とは? 意外と知らない「屋根」と「外壁」のリアルな費用と注意点

仕様

いざ家を建てる・リフォームするとなると、
「どこにお金がかかるのか?」
「どこで失敗したり、後悔してしまうのか?」
よくわからない…という方も多いのではないでしょうか?。

今回は、某大手リフォームメーカーで全国1位の実績を持つ元エリアマネージャーが、
将来後悔しない住まいづくりのポイントをわかりやすく解説していきます!

少しでも皆さんの家づくり・住まい選びの参考になればと思い、
今後も情報を発信していきます。

今回はその中でも、「外回り仕様」について解説していきます。。

屋根、外壁工事について

リフォームで最も費用がかかる工事は ズバリ、屋根工事です。

表面の塗装や漆喰の補修など、メンテナンス程度の工事であれば、数十万円前後で対応可能でが、葺き替え工事となると、屋根の形状・劣化状況・立地条件などによって作業内容が大きく変わります。

一概には言えませんが、延床30坪程度の建物の場合、平均で200〜300万円以上かかるケースが多くなっています。

屋根は建物の中で365日・24時間、雨風や紫外線にさらされる、最も過酷な環境下にある部分です。使用する建材によっては、わずか10年程度で表面が劣化してしまうこともあります。

塗装によるメンテナンスをしても、現場施工では10年前後が耐用年数の目安
外壁と一緒に塗装しても、先に屋根が傷み、再度足場を組む羽目になることも少なくありません。

足場を組むだけでも約100万円前後の費用がかかるため、建築時や大規模リフォームの際には、
将来的なメンテナンスサイクルも視野に入れた建材選びがとても重要になります。

外壁材には、以下のような種類があります

  • 乾式材:サイディング・ALCなど(最近の住宅はほとんどこれ)
  • 湿式材:左官壁など、水分を使って現場で施工するタイプ

塗装メンテナンスのみであれば、約100万円前後で可能ですが、張り替えや下地からの補修が必要になると、200万円前後はかかります。施工内容によっては、屋根工事以上に費用がかかるケースもあります。

屋根や外壁は、建物の中でも最も重要な部分です。

マンションでは、これらの修繕費用を見越して、管理費・修繕積立金を毎月世帯ごとに積み立てる仕組みが整っています。おおむね15年前後で大規模修繕を行い、建物の資産価値を維持しています。

個人住宅ではこの積み立てを各家庭で行う必要があります。
ところが実際には、ほとんどの方がこの点を意識できていないのが現状です。

建物形状で費用に大きく差が出る?

建物の形状は、建築の基本要素である「強(安全性)・用(用途/使いやすさ)・美(美しさ)」のうち、特に美観(=美)を意識して決まることが多い箇所だと思います。

たとえばハウスメーカーでは、大きく軒を出したデザイン1階と2階で奥行きに差をつけた、立体感のある外観 など、本当に美しい設計が数多くあります。

一方で、費用を抑えた建売住宅では、1階・2階がほぼ同じ面積の「総2階」の四角い建物が多く見られます。中には延床面積を整える為に、無理に歪な形にしている例もありますが…メンテナンスのことを考えると、凹凸の少ない形状のほうが費用は安く済みます。

こうなると、美ではなく「用(使いやすさ・合理性)」に重きを置いた設計と言えますね。

建築は「強・用・美」のうち、どれか一つを犠牲にせず、状況に合わせてバランスを取っていくことが大切だと私は考えています。

たとえば屋根を葺き替える場合、下屋根(1階部分の屋根)と2階外壁との取り合いが多いほど、
施工の手間が増えて費用も高くなります。さらに、施工方法を誤るとその取り合い部分から雨漏りが発生したり、建物に悪影響が出たりすることも。

また、おしゃれな寄棟屋根は見た目が美しい反面、雨樋(とい)の数が増え、材料費・工事費もかさみやすいです。

それ以外にも、以下のような付帯物の設置状況によっても、追加費用がかかることがあります

  • 室外機
  • 換気口
  • 給湯器
  • 給排水管 など

これらの位置や配管ルートの工夫によって、メンテナンスのしやすさや費用が変わってきます。

新築を建てる時に、15年後・30年後の将来を考える人は多くありません。けれども、確実に年月は過ぎていきます。そして、“永遠に保つ建材”は存在しません。だからこそ、今の暮らしやデザイン性だけでなく、将来のメンテナンスまで視野に入れた家づくりが、後悔のない選択につながります。

選ぶ材料で費用や耐久性は色々

屋根材はざっくり分けると、以下の4種類があります

  • 日本瓦
  • スレート系
  • 金属系(例:ガルバリウム鋼板)
  • アスファルトシングル

※平らな屋根(陸屋根)の場合は、「シート防水」「FRP」などの防水工法が主流です。

外壁材には、以下のようなものがあります:

  • 金属サイディング
  • 窯業系サイディング
  • 塗装や吹き付け仕上げ(下地はALCや左官など)
  • タイル貼り

どちらも、見た目の美しさ将来のメンテナンスコストを意識して選びたい部分です。

屋根や外壁は、長期的に見て「何回足場を組む必要があるか?」を意識して材料を選ぶと、生涯コストを抑えることができます。たとえば、屋根の耐久年数が30年でも外壁が15年なら、15年後に屋根と外壁のどちらかに手を入れる=再度足場代がかかることになります。

日本瓦の魅力と注意点

日本瓦は、他の屋根材と比べて**圧倒的な耐久性(50年以上)を誇ります。一度葺けば、自分の代で葺き替えることはほぼありません。

短所:重い・高価・漆喰メンテが必要

  • 非常に重く、建物の構造に負担がかかる
  • 材料費・施工費も高額(スレート系の1.5〜2倍)
  • 漆喰(接着部)部分は15年前後に補修が必要

日本瓦は、独特の立体感・流線型の美しさがあり、日本家屋にとって欠かせない存在感ある素材です。日本瓦の家では、外壁に左官仕上げが用いられることが多く、15〜20年程度で、外壁塗装+漆喰補修+軒裏や破風のメンテナンスを行うと、非常にバランスが良くなります。

日本瓦のお家で築30〜50年の場合は要注意!

西暦2000年以降に建てられた住宅は耐震基準が厳しくなっていますが、それ以前の建物は耐震性に不安が残る場合があります。重たい日本瓦を使っている場合、軽量瓦や金属屋根に葺き替えることで、揺れに対する安全性が大きく向上します。

特に「土葺き(つちぶき)」のお家は、まず耐震チェックからおすすめします。

金属屋根(ガルバリウム鋼板など)

金属系の屋根材は、軽量で施工がしやすく、コストも抑えられるのが特徴。耐久性もおおよそ30年前後と、バランスの良い素材です。

短所:ハリボテ感や断熱性に注意

  • 建物形状によってはハリボテ感が出ることもあるため、外観とのバランスに注意
  • 断熱性に劣るため、断熱材や遮熱対策が必須
     →日本瓦から葺き替えた際、夏に2階が暑すぎる!というトラブルも発生しがちです

(実際に新人時代、施主様に大目玉をくらった経験があります…)

スレート系(化粧スレート・コンクリート瓦など)

スレート系はコーティングの種類によって耐久性が、10年前後〜30年前後と大きく変わるのが特徴です。価格差はそこまで大きくないため、できるだけ耐久性の高い製品を選ぶのがおすすめ

建売でよく見かける「苔だらけの屋根」の正体…

10年も経たずに苔が生えてしまうのは、安価で販売しやすい建材を使っているため。でも…顧客は30年以上のローンを組んでいるのです。悲しい現実です。こちらも日本瓦からの葺き替え時には、断熱施工のセット導入がおすすめです。

コンクリート瓦の選択もあり

瓦の立体感を再現したコンクリート瓦という選択肢もあります。形状によっては非常に高級感があります。価格はスレートより1.2〜1.5倍程度。ただし、重さやコーティングの質に差があるため、信頼できる業者とよく相談することが重要です。

これは外壁材にも言えることですが、高級感のある建物にしたい場合は、立体感のある材料を選ぶ事をおすすめします。もちろんその分金額は高くなありますが、共に過ごす住まいになるので、少しでも気持ちの上がる仕様にしたいところです。

外壁材の選定ポイント

  • 外壁材にも立体感のあるデザインを選ぶと、高級感がアップ
  • 安価なサイディング材は、15年前後で劣化することも
  • コーキングの劣化でひび割れから内部が見えてしまう家も少なくありません

ジョイントレスの製品やガルバリウム外壁など、良い商品もあります。必ず資料を確認!

屋根材が30年持つのに外壁が15年しか保たないと、屋根のタイミングで外壁も足場を組んで再塗装…なんて二度手間が発生。逆に、屋根が10年しか保たないのに高価な外壁を選んでも、外壁塗装の意味が半減してしまいます。

見落とされがちな「軒天・破風材」も要チェック

軒裏や破風(はふ)部分の塗装が剥がれて、見た目が損なわれているお家、見たことありませんか?ここも屋根・外壁と同様に、メンテナンスサイクルを揃えて材料を選ぶのが大切です。

劣化について

そもそも劣化て何?

住まいのメンテナンスを考える上で、よく出てくるのが「劣化」という言葉。では、その「劣化」とは具体的にどういう状態を指すのでしょうか?

わかりやすい劣化のサインは「見た目の変化」

最も気づきやすいのが、意匠面の劣化です。たとえばこんな変化は、見たことがあるかもしれません

  • 色あせ
  • 苔の発生
  • 塗膜の剥がれ

家に関心のある方は、「最近、家の見栄えが悪くなってきたな…」と感じ、この段階で塗装やメンテナンスを検討されるケースもあります。

一方で、関心がない場合は、そのまま放置してしまうことが多いのです。

放置するとどうなるか?

劣化が進むと、建材が水や汚れを弾けなくなり、どんどん染み込んでいきます。するとどうなるかというと…

  • 吸水による風化
  • 冬場には染み込んだ水が凍って膨張・破損(特に屋根材)
  • 北面など日当たりが悪い面では、乾きにくく、外壁も劣化しやすい

さらに、左官仕上げの外壁では、下地を支えるラス(金網状の材料)が錆びてきます。この状態を長期間放置すると、強風や豪雨などの自然災害時に、一気に破損する危険性も

じゃあ、すぐ雨漏りするの?

すぐには雨漏りしないケースも多いです。なぜなら、多くの住宅では防水紙(防水シートやルーフィング)がしっかり施工されているからです。ただし!

  • 施工ミス
  • 防水紙の劣化
  • 台風や飛来物による損傷

こういった要因があると、内部に水が回ってしまう危険性が出てきます。

その水が構造部(柱や梁)まで到達すると、建物の寿命に関わる大問題に。場合によっては、構造補強や大規模修繕が必要になり、予想外の出費に繋がることも。

日頃のメンテナンスが何より大切!

例えば外壁なら、年に1回、水をかけて洗ってあげるだけでも効果的です。
※注意:サッシ周りは下からの水に弱いため、上からやさしく流すようにしましょう。屋根は高所で危険なので、基本的にはプロに任せるのが安全です。

塗装は何でもすればいいわけではない

塗装にもさまざまな種類・グレードがあります。
前述したように、屋根と外壁のメンテナンスサイクルを合わせて選ぶことが重要です。

バラバラだと、また足場を組み直す必要が出て、余計な費用がかかってしまいます。

塗装業者や屋根業者単体で依頼すると、自社で対応できない分野を無理に自分たちで施工することも。これは、他の職人を呼ぶとコストがかかるからです。できれば、総合建築業者や信頼できる工務店に依頼し、専門職ごとの連携が取れているかどうかを確認するのがおすすめです。

※ただし、工務店でも現場監督が自分で施工してしまい、失敗している事例もあります。

最近の外壁材は高性能。塗装が必要とは限らない

最近のサイディング材には、初めから高耐久の塗膜が施された製品も増えています。こういった材料に無理に塗装をすると、塗装がが剥がれてしまうことも。この場合は、コーキング補修のみで十分なケースも多いです。「塗らない勇気」も、ときには大切です。

ハウスメーカーの家は独自仕様に注意

ハウスメーカーの住宅は、独自仕様の建材や工法を採用していることが多く、他社がメンテナンスしにくい=費用が高くなる傾向があります。だからこそ、新築時点で将来のメンテナンスを見越した仕様決定・設計が重要です。

経験上劣化しやすいのは「北側」が多いです。基本はプロに建物の状況を判断してもらうことがベストです。ただ訪問販売には要注意!私も長年建築業界にいますが、残念ながら“お行儀のいい業界”とは言えません。だからこそ、しっかりとした業者・信頼できる担当者に依頼することが何よりも大切です。

まとめ|見落としがち!外周りの仕様決め

外まわりは、建物を守るためのとても大切な構造部分です。しかし、傷んでしまうと最も費用がかかる箇所でもあります。だからこそ、建築時や修繕時には金額だけでなく、将来のメンテナンスサイクルも意識して、しっかりと仕様を決めていくことが大切です。

そうすれば、後悔することなく、快適に長く住まうことができるはず。

本記事が、皆さまの住まいづくりやリフォームの参考になれば幸いです。

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