「実家が築100年以上の古民家だけど、リノベーションして住み続けるべき?
それとも思い切って取り壊して新築にすべき?」
と悩んでいませんか?
費用や暮らしやすさ、耐震・断熱性能の不安、そもそも古民家ってどういう構造なの?と不明点だらけでなかなか決断できない方も多いはずです。
私も数多くの古民家リノベーションに携わる中で、
「壊すのはもったいないけど、住みにくさもある」という声を何度も聞いてきました。
特に世代交代のタイミングでは、家族内で意見が割れることも珍しくありません。
本記事では、築100年以上の古民家をリノベーションする価値や現実的な課題、費用感、そして残すべきかどうかの判断基準について、わかりやすく解説します。
プロの視点で、単なる“古い家”ではなく「次世代に残す価値ある住まい」として向き合うための情報をまとめました。
この記事でわかること
・リノベーションのメリット・デメリットと費用相場
・築100年の古民家の特徴と構造
・実際にリノベすべきか、壊すべきかを判断する視点
築100年の古民家は、ただ古い家ではなく「手に入らない価値」を持つ存在です。
住み継ぐ意志があるなら、リノベーションは“アリ”と断言できます。
ただし、性能向上には費用も手間もかかるため、しっかりと検討と準備が必要です。
古民家リノベーションは「アリ」なのか?
結論から言うと、受け継ぐ気持ちがあるなら、リノベーションは大いにアリです。
私自身は古民家を所有していませんが、古民家リノベーションに携わるたびに「これは現代には真似できない贅沢だ」と実感します。昔の大工の技術、丸太梁や大黒柱、重厚な構造。今では建てられない建築様式がそこには詰まっています。
伝統工法の再現は現代ではほぼ不可能
今では建てられない構造や材料を持つ古民家は、それだけで希少価値があります。
- 丸太梁や大黒柱などは入手困難
- 建築基準法の関係で再建築できない構法も多い
- 昔の大工の技術(継手・仕口)は今や一部の職人しか再現できない
つまり、今ある古民家は“二度と手に入らない建築物”です。
古民家の不満はみんな一緒
古民家の不満点は
- 暗い
- 寒い
- 使い勝手が悪い
この3拍子でどこの家庭も同じ内容で悩んでいます。
間取りは伝統的な田の字間取りで、通り土間 台所 客間などの配置に多少違いは有りますが、普段は北側の暗いスペースが居住空間になっています。南側の日当たりの良い空間が、普段使わない続き間の座敷になっています。
断熱性も木建具や土壁の隙間風、高い床下で換気性が有るのに床下には断熱が無いなど、今の住まい方に合わせてリノベーションをすると大規模工事が必要になります。
古民家の“住んで気づく”メリットとは?
- 縁側や広縁からの借景の美しさ
- 深い庇がもたらす涼しさと落ち着き
- 無垢の木材・大黒柱の存在感
- 左官仕上げや細工に現れる職人技
- 自然素材が生む柔らかい空間
これらは新築住宅では得難い価値です。
失ってから気づく人も多い、古民家ならではの魅力です
古民家リノベーションのデメリットと現実
デメリット1:費用が高い
- 一般的な住宅リフォームの1.5〜2倍以上
- 和瓦の屋根葺き替え → 1000万円超えも
- 外壁漆喰仕上げ、内部左官・造作も高コスト
- 内部のみでも坪単価50万円以上が目安
デメリット2:構造課題
- 耐震や断熱性能面の課題
- 維持管理が必要
- 対応できる業者が少ない
古民家リノベーションの費用相場
工事内容 | 費用目安 |
---|---|
屋根(和瓦葺き替え) | 1000万円以上 |
外壁(漆喰+焼杉板など) | 500万円〜 |
内部リノベ(断熱+意匠残し) | 坪単価50万円〜 |
フルリノベ(50坪) | 2500万円〜3500万円程度 |
※条件・地域・会社によって差があります
外観を損なわないようにするためには、和瓦や漆喰、焼杉板などの伝統的な素材を使う必要があります。見た目の雰囲気は守られますが、その分コストが高くなります。
内部に関しては、梁や鴨居、柱などを活かしながら断熱・耐震性能を高める必要があり、簡単な工事では済みません。特に土壁を残す場合は厚みや工法も含めて計画的に進めることが求められます。
また、すべてを一度にリノベーションするのではなく、「まずは水回りだけ」「屋根だけ葺き替える」など段階的に進める方法もあります。費用を抑えたい場合や、予算の都合がある場合におすすめです。
築100年の古民家構造ってどんなの?
築100年以上経った古民家は、いわゆる「伝統工法」で建てられた住宅です。現代のようなコンクリート基礎ではなく、敷石や束石の上に柱を立てる構造が特徴です。土台は「式台(しきだい)」と呼ばれる木材で、柱や梁は木組みでつながれ、釘をほとんど使わずに構成されています。
この時代の住宅には、大黒柱・中黒柱・小黒柱などの存在感ある構造材が使われており、それらを「牛木(うしぎ)」と呼ばれる丸太梁で結び、全体を支えています。見上げれば、圧巻の梁組が頭上に広がり、先人たちの職人技を直に感じることができます。
また、壁が少なく、襖や障子で空間を仕切るため、必要に応じて大空間を作ることができ、家族構成や暮らしに応じて柔軟に対応できるのも特徴です。高い床下と深い軒の出は、湿気対策・日除け・通風などを自然の力でまかなう、理にかなった造りと言えるでしょう。
ただし、敷居と鴨居の高さが約1730mm前後と、現代人にはやや低く感じられる点も。これが「住みにくさ」と感じる原因のひとつになっています。場合によっては構造に配慮しながら高さの調整を行うことで、現代のライフスタイルにも適応可能です。
屋根には和瓦が載っており、その下には大量の土が敷かれています。この重みで建物を安定させるという考え方がありました。台風や地震に対する備えとして、瓦が落ちることで力を逃がす構造にもなっています。最近の家が軽量化して地震に備えるのとは、真逆の思想です。やじろべえ現象や土壁の水準性の高さ(中々壊れにくさ)仕口の柔軟性など伝統工法は地震を受け流すような考えで施工されています。
つまり、築100年の古民家とは、日本の気候風土に合った知恵と技術が詰まった住宅なのです。ただ古いだけではない、工夫と美しさが凝縮された空間なのです。
リフォームのタイミングは“世代交代”
多くのリノベーション案件は、親世代から子世代への住まいのバトンタッチ時に行われます。
今の暮らしに合わせた性能向上を望む若い世代が、「せっかくなら快適に住めるようにしたい」と考える一方で、昔ながらの家の良さを感じていないこともあります。そのため、家族間での意識の違いが出てくることも。
どこまで費用をかけるのか。何を残すのか。誰が管理・維持していくのか。こうした点をじっくり話し合いながら進めていくことが、後悔のない選択に繋がります。
信頼できる業者選びが命
古民家リノベーションは、どの業者に依頼するかで結果が大きく変わります。
伝統工法に理解のない会社に依頼してしまうと、貴重な古材が台無しになったり、構造的に危険な施工がされたりすることも。見た目だけの「古民家風リノベーション」にされてしまうこともあります。
実績のある業者を選び、担当者の知識と経験をしっかり見極めることが重要です。過去の施工事例を確認したり、実際に現場に足を運んだりすることで、信頼できるパートナーかどうかを判断できます。
まとめ:古民家を残すか、壊すか。
築100年の古民家は、ただの“古い家”ではなく、歴史や家族の記憶を宿す宝物です。
もちろん、リノベーションには高い費用や手間がかかります。でも、それを超えても「残したい」と思えるなら、その想いはきっと未来へと繋がるはずです。
一度壊してしまえば、もう二度と手に入らない。それが古民家。家族とよく話し合い、最善の選択をしてください。
そして、信頼できるパートナーと共に、次の世代に誇れる住まいを再生させましょう。
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