家を相続したあなたへ

建物

いざ家を相続するとなると、
「どうしたらいいの?」
「そもそもこのお家、もつの?」
よくわからない…という方も多いのではないでしょうか?。

今回は、某大手リフォームメーカーで全国1位の実績を持つ元エリアマネージャーが、
建物の判断ポイントをわかりやすく解説していきます!

少しでも皆さんの家づくり・住まい選びの参考になればと思い、
今後も情報を発信していきます。

今回はその中でも、「相続物件」について解説していきます。

大相続時代

現在、日本全国で空き家数は約900万棟あると言われており、過去最多を更新中!
2018年から51万棟増加したことになります。*総務省「住宅・土地統計調査」より

私が勤務していた当時も、年々「家の相続」に関する相談が増えていました。
「住み替えようか悩んでいます」
「親が高齢で、今のうちに対策したい」などなど。

団塊世代が後期高齢者となり、これからますます空き家は増えていきます。

お子さんがいらっしゃる家庭では、自分たちの代でしっかりと判断しないと、負の遺産を残すことになりかねません。

皆さんも家を相続する時のため、少しでも判断の助けになればと、私の考えをお伝えします。

住み替え? 売却? 賃貸?

一概に「こうすべき」とお伝えするのは非常に難しい問題ですが、
今回は構造面・築年数など建築の視点から解説していきます。

不動産である以上、「立地条件と価格バランスが非常に重要」です。
立地条件によっては価格がつかないこともあるので、その点はご了承ください。

建築の視点から見ると、結論としては
「メンテナンス状況と劣化の度合いによる」になります。

「そんなの当たり前でしょ!」と言われそうなので、
どこで判断すべきか、理由や補修費用の相場、私の考え方をお伝えしていきます。

構造はざっくり3種類

  • 木造
  • S造(鉄骨造)
  • RC造(鉄筋コンクリート造)※その他:マンションなど集合住宅

木造

柱や梁、土台などの主要構造部が木でできている建物は、
しっかり乾燥状態が保たれていれば100年以上もちます。
日本の気候にも適していて、良い素材です。

ただし、「雨漏り」や「シロアリによる被害」などの欠損がある場合は補修が必要です。

補強がしやすい構造ではありますが、内部構造から施工が必要なため費用はかかります。

耐震性については、基本的に西暦2000年以前の建物は耐震補強が必要と考えてください。
ハウスメーカーの家などは、自社で補強計画をしていることもあるため一概には言えませんが、

長く住む予定がある場合は耐震診断をおすすめします。

また、木造にも種類があります。
ハウスメーカーの**木質パネル構造(規格住宅)**は、補強が困難です。

とはいえ、さすがはハウスメーカー!調査してみると数十年経った家でも、非常にしっかり建っている印象を受けます。
間取りに不満がなければ、メンテナンスだけで住める・貸せることも多いです。

ただし、基礎部分に傷みがあると、爆裂現象や風化が進んでいる場合、正直、手放す判断をすべき家もあります。
(RC造で後述します)

木造部分だけを補強し、基礎に負担がかからないようにバランスをとることも可能ですが、限界はあります。

S造(鉄骨造)

重量鉄骨・軽量鉄骨で組まれている建物です。
錆びていなければ、当初の強度はキープされていると考えられます。

ただし、雨漏りが致命傷になります。鉄が錆びると補強が非常に困難です。

特に**ハウスメーカーの軽量鉄骨(規格住宅)**は、建てた会社でなければ補修できせん。
規格住宅なため、そもそも直せるかどうかも不透明です。

耐震性に関しては、2階建て程度の一般住宅が倒壊する可能性は極めて低いと考えられるので、基本的には心配不要です。

間取りの自由度は軽量鉄骨と重量鉄骨によって異なります。
重量鉄骨のラーメン構造(柱と梁で支える)は、比較的自由が利きます。

ただし、**耐火被覆材にアスベスト(石綿)**が含まれている場合、除去に1000万円以上かかることもあり、触ることすらできない可能性もあります。

都市計画区域(駅近くなど)の防火地域のS造は要注意です。アスベストは所有者責任で除去が必要です。

売却時にも負担になるので相続時には良く話し合いが必要です

RC造(鉄筋コンクリート造)

鉄筋とコンクリートで構成される住宅で、
コストが高いため「お金持ちの家」という印象があります。

その分、重厚感・自由な形状・大空間を実現できます。

ただし、こちらも雨漏りが致命傷になります。
補強は非常に難しく、一般のリフォーム会社では対応できないことが多いです。

耐震性についてはS造と同じく、2階建て程度なら特に心配はいらないと考えられます。

RCは、酸化速度が耐久年数に直結します。
アルカリ性を保っていれば鉄筋が錆びず、約50年前後が目安とされています。

錆びると「爆裂現象」が発生し、内部からコンクリートが破壊されてしまいます。

酸化速度を遅らせるには、塗装や防水などの定期的なメンテナンスが不可欠です。
メンテナンスされていないRC造は、手放すことを検討した方がいい場合が多いです。
木造よりも解体費用はかかりますが、将来の維持費を考えると補修の繰り返しは費用対効果が見込めません。


マンション・集合住宅

管理会社がしっかりしていれば、基本的に問題ありません。

管理費・修繕積立金を活用して、適切なメンテナンスが行われているはずです。

区分所有の場合は、立地や今の家族構成に合っているかどうかで住むか貸すかを判断できるでしょう。

ただし、「空き家が多い」「滞納世帯が多い」場合は要注意。
管理組合への確認をおすすめします。

住民の高齢化が進むと、駐車場の利用状況も積立金に影響します。豆知識としてどうぞ。

建て替え?リフォーム?どっちがいい?

構造ごとに対策や考え方が異なるため、注意が必要です。

住むにしても、貸すにしても

  • 間取りのニーズ
  • 構造の安全性
  • 今後のメンテナンス費用

このバランスを考慮して判断することが重要です。

木造なら補強や間取り変更がしやすいですが、

他の構造は現状の間取りを活かす方向になる可能性が高いです。

親の介護期間だけ、子育て期間だけ、Uターンで一定期間住むなど、
ライフスタイルに応じた住まい方と期間を想定する必要があります。

「家は3回建てないと理想の家にならない」と言われますが、
それだけ人生のターニングポイントが多く、その時どきに生活スタイルが変わるということです。

それに合わせて、相続した家の建物状況をしっかり調査し、
費用対効果を見ながら計画を立ててください。

正直、調査してみると建て替えが必要な家もあります。もし住み替えが不要であれば、手放す方が負担が少なく済むこともあります。

思い出が詰まった家だからこそ判断が難しいこともありますが、冷静な判断が大切です。

また、貸す場合にも貸主としての責任が発生します。
「自分が住むなら許容できる状態か?」を最低基準とし、
メンテナンスと利回りやリスクを含めて専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

「大相続時代」— 他人事ではない相続物件の対策。

各家庭の状況やニーズによって最適解は異なりますが、
まずは建物の構造を把握・調査し、
「残す」「建て替える」「手放す」の判断材料にしてください。

プライスレスな思い出も大切にしつつ、
現実的なコストや将来設計をふまえて、家族や親族で話し合ってください。

自分たちの代でスッキリ判断するのも、気持ちの良い選択です。

少しでも参考になれば幸いです。

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