「築35年の古い家、いつまで持つの?」「リフォームで本当に大丈夫なのか、それとも建て替えた方がいいのか?」そんな不安を感じている方は、とても多いです。
築30年以上が経過すると、外壁や水まわりの老朽化に加え、現行の耐震基準や断熱性能とのギャップが一気に気になり始めます。
特に、ローン完済・子育てのひと段落・定年が見えてきたタイミングで、「この家にこの先も住み続けるか?」と真剣に考え始める方が増えてきます。
この記事では、大手ハウスメーカーのリフォーム部門で、エリアマネージャーとして全国No.1の実績を持つ筆者が、
現場で数百件の「リフォームか建て替えか」の相談・提案に携わってきた経験から、机上の理論ではなく実際の施工現場で見てきたリアルな判断基準をお伝えします。
この記事では、
「8項目チェックリスト」「費用比較表」「判断フローチャート」の3つのツールを使いながら、築35年の家がリフォーム向きか建て替え向きかを、
状態・ライフプラン・予算の3軸から診断していきます。
あわせて、この年代特有の構造リスクや、ハウスメーカーの営業に流されないための防衛策も解説します。
■この記事でわかること
- 築35年の木造住宅の構造的な特徴と注意点
- リフォーム・建て替え検討の8項目チェックリスト
- リフォームと建て替え、ケース別の費用比較
- 使える補助金・減税制度まとめ
築35年の木造住宅でも、条件次第でリフォームは十分に有効な選択肢です。
ただし、判断を誤ると「1000万以上かけたのに10年も持たなかった」という後悔にもつながります。
年数だけで判断せず、全体のバランスを見ることが何より重要です。

strato
大手ハウスメーカー リフォーム部
元エリアマネージャー
エリア実績 全国No1獲得
現在は独立してブログで住まいの情報発信中
建築業界25年の知識を発信します。
築35年の我が家はどっち?判断の流れ3ステップ
忙しい方のために、まず結論の出し方を3ステップで示します。
1. ホームインスペクション(住宅診断)の検討:まず建物の「骨組み」を知る
基礎のひび割れや建物の傾き(本記事のチェックリスト①〜④)を確認します。ここに致命的な問題があれば、予算に関わらず「建て替え」の優先度が高くなります。
2. 今後の住まい計画(誰が・何年住むか):ライフプランの整理
「自分たち夫婦だけ(あと20〜30年)」ならリフォームが圧倒的にコスパ良し。「子供世代や孫世帯に引き継ぐ(あと50年以上)」なら建て替えも視野に入ります。
3. 資金計画とリフォーム減税の確認:損をしない予算組み
リフォームを選ぶ場合は、最大数十万円〜数百万円規模になる「省エネ系補助金」や自治体の耐震補助金を、必ず契約・着工前に申請できるようスケジュールを組みます。
詳しい判断基準は、この後の「8項目チェックリスト」「費用比較表」で解説します。

築35年の木造住宅ってどんな家?

築35年前後というのは、耐震基準でいうと新耐震基準(1981年)〜2000年改正前に建てられた住宅が多い時期です。
新耐震基準が施行されてから約10年が経過し、基礎は有筋コンクリート(鉄筋入り)、X軸・Y軸方向ともに一定の壁量が確保されている住宅が多い時期です。
耐震性について
基礎は有筋コンクリート(鉄筋入り)で、壁量もある程度確保されていますが、現在の耐震基準と比べると次の弱点が残ります。

築35年=危険と単純な問題ではありません。ただし、補強前提で考える築年数と言えます
▶関連記事

断熱・設備について
断熱材は薄いか、ほぼ入っていないことが多く、現在の省エネ基準とは大きな差があります。
サッシはアルミ単板ガラスが主流で、冬の結露・寒さは構造的な問題です。水回り設備も35年を超えると更新の時期に差し掛かっています。
裏を返せば、耐震・断熱・設備を的確に手当てすれば、あと20〜30年は十分に住み続けられる可能性があるのが築35年の木造住宅です。
▶関連記事

外部排水設備について
排水まわりでは、塩ビ(塩化ビニール)製の「インバート枡」(排水管が合流する地点に設置する、点検口付きの排水枡)が普及し始めた黎明期にあたるため、
コンクリート製の古い枡と塩ビ製の枡が混在しているお宅が多いのも築35年前後の特徴です。
コンクリート枡は接合部が経年でヤセて(劣化して隙間ができて)水漏れを起こしたり、
その水漏れによって枡周りの土が流れ出して空洞ができたりするおそれがあるため、
点検の際は排水枡まわりも合わせて確認しておくと安心です。
▶関連記事:外部給排水工事とは?費用相場・チェックポイントをプロがわかりやすく解説

1990年前後は「家づくりの過渡期」:施工のクオリティに大きなバラつきがある
築35年前後の家をリフォームするか建て替えるか迷う際、知っておいてほしい歴史的な背景があります。
それが、木材の加工方法が「職人の手刻み」(大工が現場で1本ずつ手作業で木材を加工する伝統的な工法)から、「プレカット」(工場の機械で木材をあらかじめ加工しておく工法)へと切り替わる過渡期だったという点です。
林野庁「令和元年度 森林・林業白書」によると、木材軸組構法におけるプレカット率は1989年(平成元年)時点でわずか7%でした。
そこから1990年代を通じて急速に普及し、1999年には48%、2018年には93%に達しています。
つまり
築35年の家は、「大工が手作業で木を刻んで建てた最後の時代」か、「導入されたばかりの手探り状態のプレカットで建てられた初期の時代」の、どちらかに当たる可能性が高いのです。
何がリスクになるかというと、この年代は建物の構造クオリティに「アタリ・ハズレ」、
つまり施工の質のバラつきが大きいということです。

- 「手刻み」だった場合:
腕の良い大工が丁寧に墨付け(加工前に木材へ印をつける工程)をして建てた家なら、35年経ってもびくともしない頑丈な構造を維持しています。
しかし、当時の住宅大量建設の中で突貫工事気味に作られた家の場合、施工が粗く、構造の接合部が弱くなっているケースがあります。 - 「初期のプレカット」だった場合:
当時はまだ木材を固定する金物接合の技術やルールが未成熟でした。
機械で削ってはいるものの、現在のプレカット住宅に比べると、地震の揺れに対する接合部の強度が大幅に不足している可能性があります。
だからこそ、素人判断のリフォームは危険です。

築35年の家は「見た目が綺麗だから構造も大丈夫」とは一概に言えない、最も建物の素性に個体差がある難しい年代です。
「リフォームで安く済ませよう」と表面だけを綺麗にしても、肝心の柱や梁の接合部がガタガタであれば、次の大きな地震で致命的な被害を受けることになります。
そのため、
リフォームか建て替えかを決める前に、必ず住宅診断(インスペクション)を行い、床下や屋根裏に入って「我が家がどちらの施工パターンで作られ、どんな状態なのか」をプロの目で客観的に見極めてもらうことが、後悔しないための絶対条件になります。
出典:林野庁「令和元年度 森林・林業白書」(プレカット率の推移)
【8項目チェックリスト】あなたの家はリフォームOK?

以下の8項目について、現状に当てはまるかどうか確認してください。
| チェック項目 | リフォームOK | 要注意・建て替え検討 | |
|---|---|---|---|
| ① | 基礎のひび割れ | ヘアクラック程度(幅0.3mm未満)2mm以下はエポキシ樹脂補強可能 | 貫通ひび割れ・著しい段差がある |
| ② | 床・壁の傾き | ほぼ水平(3/1000〜6/1000未満) | 目に見えてわかる傾きがある(16/1000以上) |
| ③ | シロアリ被害 | 被害なし・軽微 | 土台・柱に広範な被害がある |
| ④ | 雨漏り・腐朽 | 過去なし・既に補修済み | 現在進行中・構造材まで腐朽 |
| ⑤ | 外壁・屋根のメンテナンス歴 | 15〜20年以内に塗装・葺き替えあり | 一度もメンテナンスしていない |
| ⑥ | 家族構成の変化 | 現状の規模でほぼ足りている | 大幅な増床・減床が必要 |
| ⑦ | 予算感 | 500万〜1,500万円程度を想定 | 3,000万円以上かけても建て替えたい |
| ⑧ | ローン残高・資金計画 | 完済済み・余裕がある | 新たに35年ローンで検討している |
「要注意・建て替え検討」が3項目以上あった場合は、専門家による現地調査を受けた上で判断することを強くおすすめします。
特に①〜④は構造に直結するため、1項目でも該当すれば優先的に確認が必要です。
▶関連記事:【プロ解説】リフォーム現地調査が面倒|片付けは必要?失敗しないポイント解説
築35年の家はあとどのくらい持つ? 木造躯体寿命は100年以上
これは非常によく聞かれる質問ですが、答えは「どの部分を見るか」によって変わります。
ただし、これは定期的なメンテナンスが前提です。
築35年前後の住宅では、モルタル外壁+塗装仕上げが多いです。
- すでに1〜2回塗装している
- 放置して下地が傷んでいる
といったケースの違いで、外壁補修費が高額になることもあります。
また、築35年を超えた木造住宅では、多少の傾きが出ている家も少なくありません。地震による歪みや、外壁・屋根のメンテナンス不足によって雨漏りが発生しているケースも多く見受けられます。
そのため、知識のある業者によるホームインスペクション(住宅診断)を行い、構造部分に問題がないか確認することが重要です。
▶関連記事:【プロ解説】リフォーム現地調査が面倒|片付けは必要?失敗しないポイント解説
【診断】あなたの家はリフォーム向き?建て替え向き?
最大の判断軸は、
- コスト
- 誰がこれから住むのか
この2点です。

リフォームが向くケース
このケースでは、耐震補強+断熱改修+水まわりリフォームの組み合わせが最もコスパの高い選択です。全面改装せずとも、優先度の高い工事から段階的に進めることもできます。
建て替えが視野に入るケース
ただし、建て替えが「得」になるかどうかは費用次第です。次の比較表で確認しましょう。
建て替えが必須なパターンは、地盤沈下がある・建物の傾きが補強レベルを超えている・擁壁などに構造的な不安がある。特に、人体への影響が出る傾きは危険です。
【現場実例】リフォームしない方がいい家の具体的な特徴

これらは実際の現場でよく見られるケースで、基礎や地盤に構造的な問題がある場合、リフォームで表面を直しても数年で不具合が再発するリスクが高くなります。
該当する項目がある場合は、リフォームありきで話を進めず、まず建て替えも含めてフラットに検討することをおすすめします。
ジャッキアップや地盤注入といった補修方法もありますが、コスト倒れになるリスクが高い点を理解しておきましょう。

どうしても残したいと強い要望を受け施工しましたが、数百万の費用がかかりました。
元エリアマネージャーが明かす、「建て替え営業」に流されないための防衛策
ここで一つ、現場の実情をお伝えします。
大手ハウスメーカーの社内では、
リフォーム部門は既存客のアフターメンテナンスから派生した部署であることが多く、花形である新築・建て替え部門に対して立場が弱いケースが少なくありません。
中には、新築営業から異動してきたばかりの担当者が、リフォームの提案に慣れないまま「建て替えのほうがお得です」と勧めてしまうこともあります。
これに流されないための防衛策はシンプルです。
A社の回答をB社にぶつけ、B社の回答をC社にぶつける、というように回していくと、どこかで話の辻褄が合わなくなる会社が出てきます。
それが「誤魔化しているポイント」です。
最近はAIに「業者の立場」「施主の立場」それぞれで質問して知識を仕入れておき、その知識を担当者にぶつけて反応を見る、という方法も有効です。
知識のある施主だとわかれば、営業側も誠実な説明をせざるを得なくなります。
費用比較|全面リフォームvs建て替え(30坪・木造の目安)
| 工事内容 | 全面リフォーム | 建て替え |
|---|---|---|
| 解体費用 | 不要(一部解体のみ) | 150万〜200万円 |
| 本体工事 | 800万〜2,500万円 | 3,000万〜4,000万円以上 |
| 耐震補強 | 100万〜300万円(含む) | 新築基準で対応済み |
| 断熱改修 | 100万〜200万円(含む) | 新築基準で対応済み |
| 外構・諸費用 | 50万〜150万円 | 200万〜400万円 |
| 合計目安 | 約850万〜2,650万円 | 約3,350万〜4,600万円以上 |
| 完成後の性能 | 既存構造ベース(補強後) | 現行最高基準の新築 |
| 工期 | 2〜4ヶ月 | 4〜6ヶ月(仮住まい必要) |
全面リフォームと建て替えの費用差は約1,500万〜2,000万円が目安です。
ただしリフォームの場合、構造の状態によって追加費用が発生することがあります。
見積もり前に現地調査(ホームインスペクション)を行い、追加リスクを把握しておくことが重要です。
リフォームのメリット
極論、今も住めている家なので、設備交換や塗装などのメンテナンスだけで住み続けることも可能です。
どこまで住宅性能を高め、どこまで間取りを改善するかによって、費用は大きく変わります。
ただ、頭の中で考えても答えは出ません。一度は必ず試算してもらうことをおすすめします。
▶関連記事:相見積もりを取るべき理由
新築(建て替え)のメリットと注意点
ただし、
- 坪単価80万円以上が目安
- 解体費は年々高騰
- 固定資産税は再計算
新築は理想を形にできる反面、贅沢品でもあります。
また、新築であってもリフォームでもメンテナンス積立は必ず必要です。
建材の性能は向上していますが、メンテナンスフリーではありません。
関連記事:戸建て住宅の維持費で一番高いのは?屋根と外壁のリアルなメンテナンス費用と注意点
使える補助金・減税制度まとめ

リフォームを選んだ場合、複数の公的支援を組み合わせることで実質負担を大幅に下げられます。
| 制度名 | 対象工事 | 補助額の目安 |
|---|---|---|
| 省エネ系補助金 | 省エネ改修(断熱・窓・設備) | 最大30万〜60万円 |
| 耐震改修促進補助金(市区町村) | 耐震診断・耐震補強工事 | 診断無料〜工事費の2/3補助(上限あり) |
| 住宅ローン減税(リフォーム版) | 耐震・バリアフリー・省エネ改修など | 年末ローン残高の0.7%(最大10年) |
| リフォーム減税(投資型) | ローンなしでも対象 | 工事費の10%を所得税から控除 |
補助金は工事着工前の申請が条件のものが多く、先着枠が埋まると締め切られます。
検討が固まったら早めに動くことをおすすめします。詳細は自治体窓口またはリフォーム会社に確認してください。
よくある質問
- Q築35年の木造住宅の寿命はどのくらいですか?
- A
「どの部分の寿命か」によって異なります。木造の構造体は乾燥状態を保てば100年以上、基礎コンクリートは大きな劣化がなければ50〜60年以上もちます。
ただしこれは定期的なメンテナンスが前提です。外壁・屋根・給排水管などの仕上げ・設備類は20〜30年ごとに更新が必要で、これらを怠ると構造体の寿命も縮まります。築35年はまだ「構造を活かせる段階」であるケースが多いです。
- Q築35年のリフォームにかかる費用の目安は?
- A
工事範囲によって大きく異なります。水まわりのみなら100万〜300万円、耐震補強+断熱改修+内装の部分改修で500万〜1,000万円、全面リフォームになると850万〜2,650万円が目安です(30坪・木造)。
構造の状態によっては追加費用が発生する場合もあるため、着工前にホームインスペクションで状態を把握しておくと安心です。
- Qリフォームと建て替え、どちらが費用は安いですか?
- A
一般的には全面リフォームの方が約1,500万〜2,000万円安くなります(30坪・木造の場合)。
ただし、リフォームは構造の問題が発覚すると追加費用が膨らむリスクがあります。また建て替えの場合は仮住まい費用・解体費・外構費なども含めた総額で比較することが重要です。頭の中だけで判断せず、必ず両方の見積もりを取って比較することをおすすめします。
- Q築35年の家をリフォームすると後悔しますか?
- A
構造に問題がある状態でリフォームだけ行うと、「見た目はきれいになったが数年で不具合が出た」という後悔につながりやすいです。
後悔しないための3つのポイントは、①基礎・シロアリ・雨漏りを事前に確認する、②耐震・断熱を同時に手当てする、③新築・リフォームどちらを選んでもメンテナンス積立を計画に組み込む、です。
- Q築35年でも住宅ローンは組めますか?
- A
リフォームローンは築年数の制限が比較的緩く、多くの金融機関で築35年でも利用可能です。
住宅ローン(フラット35リノベ等)を使う場合は耐震性能などの基準を満たすリフォームが条件になります。融資額・審査条件は金融機関によって異なるため、リフォーム会社経由で複数社を比較することをおすすめします。
- Q耐震補強だけしても意味がありますか?
- A
十分意味があります。
耐震補強は「大地震で倒壊しない」ことを目的とした工事で、命を守る最優先の工事です。断熱・設備は後から段階的に対応できますが、耐震補強は早いほど効果的です。多くの自治体で耐震診断は無料〜補助あり、補強工事も費用の2/3補助(上限あり)が受けられるケースがあります。まず耐震診断から始めてみてください。
- Q傾いている家でもリフォームできますか?
- A
A. 傾きの程度によります。3/1000〜6/1000未満であればリフォームで対応可能なケースがほとんどです。
ただし、目に見えてわかる傾き(16/1000以上)がある場合は基礎や地盤に問題がある可能性があり、ジャッキアップや地盤注入などの補修が必要になります。この場合は費用が数百万円単位になることもあるため、建て替えと費用を比較した上で判断することをおすすめします。
まとめ|「年数」ではなく「状態」で判断する
築35年の木造住宅は、一概に「古いからダメ」ではありません。適切なメンテナンスが行われてきた家であれば、リフォームで十分に次の世代まで住み続けることができます。
判断の基本は、
- 構造の状態(基礎・シロアリ・雨漏り・傾き)
- 誰がいつまで住むか(居住期間・家族構成)
- 予算と費用対効果(リフォーム vs 建て替えの差額)
この3点を整理した上で、信頼できる専門家に現地を見てもらうことが、後悔しない選択への第一歩です。
「うちはどっちが向いているのか」が気になる方は、まずホームインスペクション(住宅診断)を検討してみてください。多くの自治体で診断費用の補助が出ます。



コメント